【コラム】アドラー心理学に見る大坂なおみ選手のメンタルの成長

テニスプレーヤーの大坂なおみ選手が1月の全豪オープンを制し、ついに世界ランキング1位になりました。
若者のこの偉業に、ただただ敬服するばかりです。
テレビなどの報道を見る限り、この偉業の要因として彼女のメンタル面での成長がよく挙げられていました。
そこで今回はそのメンタル面の成長をアドラー心理学の観点から考察してみたいと思います。
まず本題に入る前に、皆さんに伺いたいことがあります。
「劣等感」という言葉がありますが、この意味は何でしょうか?
「劣等感」というものに対し、皆さんだったらどう説明するでしょうか?
この質問に多くの人が「劣等感とは他人と比較した時に、自分が劣っていると思う部分に抱く感情」などと答えてくれます。
この答えも決して間違ってはいないと思います。
しかしアドラー心理学では実は少し違う考え方をします。
どういう考えかというと「劣等感とは他人との比較ではなく、自分の理想と現実のギャップに抱く感情」と考えます。
皆さんはいかがですか?
いま現在、理想の自分を完璧に体現できているでしょうか?
ここで「完璧に体現できている!」と言い切れる人は少ないのではないでしょうか。
その意味でアドラー心理学では「劣等感」を、多くの人が持ち得る健全な感情であるとしました。
そして、大切なのはこの「劣等感」を建設的に受け入れることです。
もし劣等感を素直に受け入れることができれば、改善や克服に向けた行動へと自ら掻き立てることができます。
逆に「劣等感」を受け入れずに見て見ぬふりをしたり、自分以外の何か他のせいにしたりするなど非建設的な方向に向かうと、本人の成長を阻害してしまいます。
この劣等感を受け入れるか否かについては、「自己肯定」と「自己受容」という言葉の違いによっても理解することもできます。
まず「自己肯定」とは一般的には自分に自信を持つ、自分を認めてあげるという形でポジティブな意味を持ちます。
ただ、それに加えて自分の至らない点を認識しつつもそこには目を向けず、無理にポジティブに振る舞うというニュアンスも感じとることができます。
一方、「自己受容」というのは至らない点をことさら卑下することなく、または強がることもなく素直に見つめて受け入れる態度として解釈することができます。
アドラー心理学の考えから言えば、己の劣等感を素直に受け入れる、つまり自己受容することができて初めて改善や克服に向けて動きだすことが可能になるのです。
さて、これらのことを踏まえて大坂選手に話を戻すと、私が注目したのは全豪オープンの大会前に会見で彼女が「自分の精神年齢は3歳」と言っていた部分です。